瀧本岳為
昭和17年1月1日生
愛知県北名古屋市 在住
【吟歴】 |
昭和41年 社団法人日本詩吟学院 中日本岳風会(現 公益法人日本詩吟学院認可 中日本岳陵会)に入門 平成27年7月1日 上席師範 |
【著書】 | 春秋一年録 |
イラスト制作
名古屋芸術大学 日本画コース 荒木紀江先生ご指導による学生の皆様
瀧本岳為オリジナル漢詩
初 春 偶 成 瀧 本 岳 為 作
旭 日 輝 波 天 染 紅 旭日(きょくじつ)波(なみ)を輝(てら)し天(てん)紅(くれない)に染(そ)まり、
征 帆 千 里 纏 春 風 征帆(せいはん)千里(せんり)春風(しゅんぷう)を纏(まと)う。
漁 歌 遠 響 静 灘 上 漁歌(ぎょか)遠(とお)く響(ひび)く静灘(せいたん)の上(ほとり)、
瑞 気 今 朝 満 海 東 瑞気(ずいき)今朝(こんちょう)海東に満つ。
(語訳) | 征帆=遠く往く船、 静灘=静かな水際のほとり、 瑞気=めでたい気運 |
(通釈) | さしのぼる旭日は波を輝し天は紅に染まる、千里征くふねは、春風を纏っているようだ。 大漁のうたごえも遠く響く、静かな水際のほとり、めでたき気運は今朝この東海に満ちている。 |
(詩形) | 七言絶句、仄起式 |
(韻字) | 上平声 一 東韻、 |
(社)日本詩吟学院岳院岳風会会報誌、 月刊「吟道」平成二十二年三月号に掲載平成二十二年十月七日 |
雨 後 閑 詠 瀧 本 守 作
枕 上 閑 聞 檐 滴 音 枕上(ちんじょう)閑(しずか)に聞(き)く檐滴(えんてき)の音(おと)、
小 斎 欹 耳 坐 蕭 森 小斎(しょうさい)耳(みみ)を欹(そばだ)てて、蕭森(しょしん)に坐(ざ)す。
午 時 剛 好 華 宵 境 午時剛(ごじまさ)に好(よし)、華宵(かしょう)の境(きょう)、
疑 是 佳 人 弾 玉 琴 疑う(うたが)らくは是(これ)、佳人(かじん)が玉琴(ぎょくきん)を弾(だん)ずるかと。
(語訳) | 「枕上」まくらべ。 「檐滴」のき先から落ちる雨だれ。 「蕭森」しずかなさま。 「華胥」昔、黄帝が昼寝の夢に華胥の国に遊んで泰平のさまを見たと言う故事。転じてひるね。 |
(通釈) | うたた寝の中、檐の雨だれの音が、心地よく閑かに聞こえてくる。 しずかな書斎に一人耳を欹てて聞き入るうち、何時しかまたうとうととまどろみの境地に、そしてあの雨だれの音が、うたた寝の中で美女の奏でる琴の音かと疑うほどに聞こえたのだった。 |
(詩形) | 七言絶句、仄起式 |
(韻字) | 下平声 十二 侵 |
平成二十年七月二十五日 |
無双直傳英信流居合兵法第二十代宗家河野百錬先生を偲んで作有り
百 錬 詞 瀧 本 岳 為 作
無 双 流 統 是 神 州 無双(むそう)の流統(りゅうとう)、是神州(しんしゅう)、
宗 範 遺 風 萬 世 留 宗範(そうはん)の遺風(いふう)、万世(ばんせ)に留(とど)む。
居 合 本 義 存 得 道 居合(いあい)の本義(ほんぎ)は、得道(とくどう)に存(そん)す、
古 来 剣 聖 自 慎 修 古来(こらい)、剣聖自(けんせいおのずか)ら慎修(しんしゅう)。
(語訳)
無双=並び立つもの無し
遺風=先人の残された道、教え(史記、周記、脩政法文武成康之遺風)
(通釈)
神州(この国)に伝う伝統武道、四百有余年の歴史を伝える我が無双直伝英信流居合兵法、その第二十代宗家河野 稔(号 天剣百錬)先生。師の遺された著書「居合道真諦」に曰く、居合道の本義、「居合は武道の禅である、」それは道元禅師の言葉で「得道」即ち、剣禅一如にして、身をもって道を得ることだと示している。
居合を志す者、須らくこの永遠の課題に向かって精進すべしと。
古来、剣聖は自ら慎み深く身を修める求道者であった。
(詩形)
七言絶句、平起式
(韻字)
下平声、十一、尤
平成二十三年十一月八日
秋 日 尋 古 蹟 瀧 本 岳 為 作
独 立 荒 墟 夕 照 斜 独(ひと)り荒墟(こうきょ)に立(た)てば夕(せき)照(しょう)斜(ななめ)なり
残 蝉 啼 盡 已 秋 加 残蝉(ざんぜん)啼(な)き盡(つ)くして已(すで)に秋(あき)加(くわ)わる
更 尋 古 蹟 入 山 隧 更(さら)に古蹟(こせき)を尋(たず)ねて山隧(さんすい)に入(い)れば
只 有 西 風 一 朶 花 只(ただ)西風(せいふう)一朶(いちだ)の 花(はな)有(あ)るのみ
(通釈)
歴史の片隅に忘れられた廃墟の丘に、ひとり立ち寄ったのは初秋の日差しが漸く斜めになった頃だった。
騒がしく啼いていた蝉もやみ、秋の気配が増す。
古蹟を尋ねようと山隧に分け入ったが、そこには只秋の風に揺れる一枝の花が寂しくあるのみだった。
(語釈)
「荒墟」あれた山のふもと。 「残蝉」秋の蝉。
「古蹟」歴史的な出来事の有った場所。 「山隧」山深く
「西風」秋風。 「一朶」一枝の。
(詩形)
七言絶句、仄起式。
(韻字)
下平声、六麻韻。
(平成二十一年一月号「吟道」掲載)
公益社団法人日本詩吟学院認定
宗佑 瀧本岳為(中日本岳陵会副会長)
無双直傳英信流居合兵法
寄 中 津 川 剣 士 瀧 本 岳 為 作
凛 然 独 坐 胞 山 中 凛然(りんぜん)として独(ひと)り坐(ざ)す胞山(ほうざん)の中(うち)、
鍛 錬 壮 夫 心 自 雄 鍛錬(たんれん)の壮夫(そうふ)心(こころ)自(おの)ずから雄(ゆう)なり。
傳 得 無 双 流 統 剣 伝(つた)え得(え)たる 無双(むそう)流統(りゅうとう)の剣(けん)、
霜 鋒 三 尺 断 天 風 霜鋒(そうほう)三尺(さんじゃく) 天風(てんぷう)を断(た)つ。
(語訳)
凛然=りりしく、心身が引き締まっている。
胞山=恵那山、古くは胞衣山(ほういざん)とも書かれこの山に天照大神が生まれたときの胞衣(えな)(胎盤)を納めたという伝説からこの山の名の由来と言われている。
壮夫=強く盛んな男子。
無双=並び立つ無し。
霜鋒三尺=するどい矛先の日本刀。
(通釈)
名峰恵那の山中、凛然として心身を鍛えたる剣士の心はおのずから雄者なり。
伝え得たる無双の剣法、これ英信流居合兵法たり、その神技、鋭利日本刀を以って、あまつ風をも断つ。
(詩形)
七言絶句、平起式。
(韻字)
上平声、一 東
平成二十四年五月十三日
無双直伝英信流居合兵法
修行者 瀧 本 守